かつてインターネットに接続してそのサービスを利用するには、LAN側も有線での接続しか方法がありませんでした。無線LANが利用されるようになっても速度面等々で無線LANの使用感は有線LANには及ばない状況が続いていました。
が、その状況もここに来て大きく変わりつつあります。
実効通信速度で現在一般的な1Gbpsの有線LANを超える速度を実現する方式も登場しています。
そんな現在の無線LAN、Wi-Fiの状況と、それを踏まえた現時点(2020年初)のWi-Fiルーターのお勧め機種を6つピックアップしてご紹介します。
最新ルーター事情とルーター選びのチェックポイント
まず最初に簡単に現在の無線LAN、Wi-Fiを巡る事情をまとめておきます。合わせて現状を踏まえつつWi-Fiルーターの選び方のチェックポイントを説明します。
無線LANの規格
今、Wi-Fiで最も使われるようになっている規格はWi-Fi 5(=IEEE802.11ac)だと思われます。
この規格では一般的なパターンだと1ストリームで433Mbpsのリンクアップ速度が実現できます。多くのスマートフォンやノートパソコンでは2×2 MIMOと呼ばれる仕組みで2ストリーム接続を行なって、867Mbpsのリンクアップ速度が実現できます。
そしていよいよ次の無線LANの規格Wi-Fi 6(=IEEE802.11ax)の市場が立ち上がり始めました。
比較的普及価格帯に近いWi-Fiルーターが市場に投入され、スマートフォンではまずiPhone最新シリーズがこの規格に対応。さらにノートパソコンの新機種でもWi-Fi 6対応をうたう製品が増えています。
実はWi-Fi 6は最大通信速度の向上よりも安定した接続の実現をメインターゲットに据えた規格です。特に大量のWi-Fi機材が存在するオフィスなどで大きな威力を発揮します。
とは言ってもしっかり最大通信速度の向上も盛り込まれており、Wi-Fi 5と同等の接続条件で5割近い通信速度の向上が期待できます。一般的な2×2 MIMOの接続で1,200Mbpsのリンクアップが可能です。
ちなみにWi-Fi 6、Wi-Fi 5という呼び方はつい最近生まれた無線LAN規格の「ニックネーム」のようなものです。詳細な規格自体はそれぞれIEEE802.11ax、IEEE802.11acそのもので、新たな規格が作られたわけではありません。
Amazonのコメントなどにそのあたりを混同されているものも見かけましたのでご注意を。
通常はWi-Fi 6=IEEE802.11ax、Wi-Fi 5=IEEE802.11ac、Wi-Fi 4=IEEE802.11nです。(Wi-Fi 3,2,1はありません)
Wi-Fiアライアンスによる認証を通さなければWi-Fi 6などの名称を使うことが出来ませんが、今の無線LAN機材でWi-Fi認証を通さない選択はあり得ませんので完全にイコールと考えていただいて構いません。
Wi-Fi≒無線LAN
このページの中ではこのあと無線LANのことはWi-Fiと表記します。
前の節で触れたとおり今では無線LAN機器でWi-Fi認証を通さない選択はあり得ませんので、Wi-Fiと無線LANは完全にイコールで考えて大丈夫です。
ちなみに、一部で携帯電話回線を使ったインターネット接続サービスがWi-Fiと呼称される場合がありますが、元々の言葉の意味的にはこれは誤用です。
子機側の対応規格を必ずチェック
Wi-Fiルーターを選ぶ時にはルーターに接続して使用する端末(=子機)側の対応規格をしっかりとチェックしておきましょう。Wi-Fiルーター側が非常に高性能でも子機側の性能次第でそのポテンシャルが無駄になりかねません。
スマートフォンやノートパソコンでは内蔵できるアンテナの数に限界がありますので、ほとんどすべての機種は2ストリーム、2×2 MIMOでの通信までの対応になります。
このためWi-Fi 5で1.3Gbpsとか1.7Gbpsのリンクアップ速度を実現するWi-Fiルーターをフル活用できる端末はあまり多くありません。
費用面を最適化したいユーザーはこの辺りをしっかり意識して端末側のWi-Fiのスペックをチェックしておくようにしましょう。ただ、将来の投資的意味でハイスペックなWi-Fiルーターをチョイスする選択も決して間違いではありません。
また、新しい機材ではWi-Fi 5対応、Wi-Fi 6対応機材が混じっていますので、こちらの対応規格もしっかりチェックしておく必要があります。
マンション向けおすすめWi-Fiルーター
まずはマンション向けのお勧めルーターからご紹介します。
もしも床面積が広かったり頑丈な壁があったりする住居では、戸建て住宅向けのお勧めルーターとしてピックアップしている製品を選択した方が良いケースもあります。
バッファローWSR-1166DHPL
今のWi-Fiルーターとしてはエントリークラスになるのがこれぐらいのスペックの機材です。Wi-Fi 5の2ストリームまでの対応ですが、それでも最大リンクアップ速度は867Mbpsに達します。
Wi-Fiは実効通信速度がリンクアップ速度の1/3〜1/2程度に留まるケースが多いのですが、それでも数百Mbpsでのデータ転送が可能です。
価格もAmazonで4千円程度とお手頃です。
NEC Aterm WG2600HS
AtermシリーズはNECプラットフォームズが手がける製品です。かつてのISDN時代からの老舗ブランドでそちらの観点からも安心感が高い製品です。
こちらはWi-Fi 5の4ストリーム接続による最大1,733Mbpsのリンクアップが可能です。
冒頭で触れたとおり、4ストリーム、4×4 MIMOで通信を行えるWi-Fi子機は多くはありませんが、対応している機材の性能をフルに引き出すにはこういったルーターが必要になります。
こちらはAmazonでは7千円台で入手できます。
TP-Link AX1500
TP-Linkと言うメーカーは日本ではあまり知名度がなかった会社ですが、アメリカなどで高いシェア持つネットワーク関連機材の製造・販売会社です。
ピックアップしたAX1500は現時点でWi-Fi 6対応のWi-Fiルーターとしては最安の製品になります。
2ストリームまでの対応で最大リンクアップ速度は1,201Mbps。もちろんそれ以前の規格Wi-Fi 5やWi-Fi 4での接続もサポートします。
価格はAmazondで8,800円です。
戸建て住宅向けおすすめWi-Fiルーター
戸建て住宅向けということでマンションよりも広い床面積、2階や3階建ての住宅を想定してお勧めWi-Fiルーターをピックアップします。
今回はより広いエリアを効果的にカバー可能なシステムとして「メッシュWi-Fi」システムをチョイスしています。
メッシュWi-Fiはハードウェア的にはWi-Fiルーター+Wi-Fi中継器的な形態ですが、ソフトウェアの工夫によりルーター本体、中継器側の接続の切り替えが自動で行なわれたり、同一のSSIDを使用できたりする便利性の高さを持ちます。
実質のカバー面積を大きく広げられるシステムです。
TP-Link Deco M4
現時点のメッシュWi-Fiシステムのエントリーモデルと言えるのがこちらの製品になります。TP-LinkのDeco M4です。
Wi-Fiルーターとサテライト(=メッシュWi-Fiシステムの中継器側)の2台セットが1万円ちょっとから購入可能です。
TP-LinkのWi-Fiルーター全般に言えることなのですがDeco M4も同時接続可能な子機の台数が大きめで、エントリークラスのモデルながらかなり本格的な利用も十分視野に入る製品です。
ネットギアOrbi Micro
こちらもメッシュWi-Fiシステムです。セットで前述のDeco M4の倍程度の価格になるのですが、その分こちらの方が実効通信速度が高くなる可能性が高いシステムになっています。
Deco M4はWi-Fiが「デュアルバンド」のシステムですがこちらは「トライバンド」。
同時に扱えるWi-Fiのバンド数が多い分、メッシュWi-Fiシステムでルーターとサテライト間の通信に使用するためのWi-Fi回線を占有に近い形で利用しやすく、子機をどちらに接続しても通信速度の変化が少ない使用感になります。
ルーターとサテライト1つずつのスターターキットがAmazonでは2万3千円程度で購入できます。
オンラインゲーム向けおすすめルーター
オンラインゲームとは言っても今はさまざまな種類のゲームがあります。ブラウザゲームやカジュアルなスマートフォンのタイトルなら、ルーターの性能はあまり問題にはなりません。
その代わりリアルタイム性の高いネットワークゲームではルーターの高い性能が求められるケースが多くなります。結果、そういったゲームに向くルーターは高性能で高価格な製品になるケースが多くなります。
ASUS RT-AX92U
ASUSには同社のゲーミングPCブランドであるR.O.GシリーズのWi-Fiルーターもありますがそちらはさらに高価な製品です。
今回はWi-Fi 6の4.8Gbpsでのリンクアップに対応し、同社のメッシュWi-Fiにも対応可能なRT-AX92Uをお勧めルーターとしてピックアップします。
ネットワークゲームではプレイ中に巨大なデータのやりとりはありません。その代わり小さなデータをレスポンス良く送受信できる性能がルーターに求められます。このためには通信速度の高さではなく、ルーター自体の処理性能の高さが必要になります。
とてもザックリした基準にはなりますが、ルーター自体の処理性能は概ね価格に比例します。普及価格帯のルーターではどうしても通信の絶対的なレスポンスには期待出来ません。
ネットワークゲームでギリギリのところまで条件を詰めたいユーザーは、ルーターにも投資をした方が安心感は上がります。
この製品はAmazonで3万5千円程度で販売されています。