FiiO Q1MkIIの詳細レビュー!スマホで聴く音楽をバージョンアップ

この記事でレビューするガジェットはちょっとマニアックかもしれません。スマートフォンやパソコンと接続して音をグレードアップするための製品です。

今は出先だけでなく自宅でもスマートフォンだけで音楽を楽しんでいるユーザーも増えているのではないでしょうか。

スマホ一つだけで全部が完結できてしまうので便利は便利なのですが、スマートフォンは基本あくまで「インターネットのサービスも使える電話機」ですから、音質に関してはどうしても限界があります。

高級機では以前よりもずっと音の面で頑張っている機種も増えてはいますが、やっぱり本格的なオーディオ機器との間には音質面でそれなりの差が残っています。

ここを一気に埋めてくれるのが今回レビューするポータブルヘッドフォンアンプの「FiiO Q1MkII」のような製品です。

本来情報機器は音楽再生が苦手

スマートフォンはその多機能さから情報収集端末としての役目だけではなく、カメラになったり音楽プレイヤーになったりもします。

今回注目するのは音楽プレイヤー機能の部分ですが、本来はスマートフォンやパソコンなどのデジタルな情報機器はあまり音楽再生とは相性がよろしくありません。

デジタルガジェットで使われる電子機器が発する非常に高い周波数のノイズはアナログな音楽機材に悪影響を及ぼす上、なかなかそのノイズをブロックするのが難しくなっています。

また、スマホでは色々な機能を薄い本体に詰め込むことになるので、サイズの面、コストの面など複数の観点から、オーディオ機能部分だけにお金とパーツをつぎ込むことが出来ません。

ですので、スマホで再生できる音はどうしても「妥協」の産物になってしまいます。

そこでヘッドフォンアンプ登場

スマホで聞く音楽をアップグレードする時に便利なものの一つが今回レビューする「ヘッドフォンアンプ」と呼ばれる類いのガジェットです。

ヘッドフォンアンプは音楽再生に特化していますし、スマートフォン側から音楽のデータをデジタルのままもらえば入力際のは劣化無し。そこからスマホ本体よりもずっと音質が良い機材を使って音楽を再生できるようになる訳です。

一気にスマホで聴く音のアップグレードが狙えます。

また、スピーカーを使っていい音で音楽を聴くにはそれなりの予算がいります。これに対してヘッドフォンやイヤフォンを使う場合には予算は少なめで済みます。より本格的なオーディオ入門の手段としてヘッドフォンアンプ+ちょっといいイヤフォン・ヘッドフォンはおすすめの方法です。

Q1MkIIの音を聴く

ではFiiO Q1MkIIを使って音楽を聴いてみましょう。

使うスマートフォンはソニーのXperia 1。Q1MkII本来の性能を活かすために、XperiaとQ1MkIIはUSBコネクタ経由の「デジタル」で直接接続します。

こうすると、スマートフォン側では音楽のデータを一切操作することなく劣化のないものをヘッドフォンアンプ側に渡すことが出来ます。そしてヘッドフォンアンプのQ1MkIIでデジタルの音楽データをアナログ信号に変換、それをイヤフォンを動かせるところまで増幅します。

デジタルデータからアナログ信号への変換と音の増幅によりクオリティが高いヘッドフォンアンプ側の機材を使えるので根本から音が良くなる理屈です。

Xperiaで音楽を再生するソフトはソニーのMusic Centerを使っています。

イヤフォンは著者が個人的にリファレンス的ポジションで扱っているJVCビクターのHA-FXZ200です。音源は音楽のダウンロード販売を行なうmoraから購入したPCM形式のハイレゾ音源をいくつか。

Xperia 1には最近のスマートフォンの流れどおりアナログのイヤフォンジャックが搭載されていません。このためイヤフォンで音を聴こうと思ったらBluetoothイヤフォンを使うか、付属のイヤフォンアダプタ経由か、今回行なっているようにUSBで外部に追加のガジェットをつける必要があります。

ですので直接的な音の比較は難しいのですが、Bluetooth接続のイヤフォンよりやはり数ランク上の音が聞こえてきます。

それぞれの音がすごくシャープに滲みなくビシッと決まってくれるイメージです。音が鳴る空間的な場所と音色自体が全然ぼやけない、と言うといいでしょうか。

オーディオ的な表現だと「分解能が高い」という言葉で表現される内容だと思います。

オーディオ製品のレビューだとこの言葉はよく使われていますが、音色的な意味合いと音の空間的な位置の意味合いの両方を切り分けずに「分解能が高い」と書かれてしまうことが多いので、せっかくのレビューが分りにくくなっていることが多いですね。

もう少し具体的には、似たような音色の音が簡単に聞き分けられる、空間的にすぐ近くで鳴っている楽器の音が混じってしまわずキチンと別のものとして認識出来る、そういう聞え方です。

あと、音源には基本的にポテンシャルが高いハイレゾ音源を使っているのもあって、音が消えていくところ、残響が消えるところまで気持ちよく聞えてくるのも特徴だと思います。

これはノイズが少ないことの表れでもあります。ノイズが多い=S/N比が悪いと、残っているノイズでせっかくの響きが消されてしまいますから。

FiiOというオーディオメーカーの特徴でもありますが、機材自体の音の癖、音質への色づけはほとんどありません。どこかデジタルな音っぽい、とも言えるかもしれませんが、元の音への忠実度が高くサラッとした音の出方です。

個人的には音の聞き分けの時に一番機材の特徴が出るのはボーカルとピアノの音だと思っていますが、どちらもCDの音より柔らかくつややかに聞えます。歌い手の息継ぎの音のリアルさなんかは、まさに「はっと息を呑む」ぐらいの聞え方をします。

まあ、こちらには音源データがハイレゾであることも効いていますね。

いい音で聞えるオーディオシステムって、実はボリュームを上げても音が崩れてうるさくなったりしません。Q1MKIIの音もまたしかり。

なので気づいたらどんどんボリュームを上げてしまったりします。耳のためにはあまりよろしくありませんので、こちらは要注意です。

それから今回試聴で使ったイヤフォンは少し「能率」が低くて、同じボリューム設定でも音量が出にくい製品です。ですが。Q1MkIIはとてもパワフルで、ボリュームをあまり上げなくても十分な音量で再生が行えるようになっています。

パソコンでもOK

FiiO Q1MkIIはUSBに接続する音響機器の共通規格「USBオーディオクラス」というものに準拠した製品です。ですので、スマートフォンやパソコンなどがこの規格に対応していれば特別なソフトを追加でインストールしなくても、ケーブルさえ繋げばすぐに利用できるようになっています。

Windows 10やMacOSならハイレゾ音源もしっかりならすことができます。

上でも書きましたがパソコンも音楽再生はあまり得意じゃありません。特にデスクトップパソコンは電源自体がオーディオ的にはかなりよろしくないクオリティですので、Q1MkIIのような機材を追加する効果は大です。

遊び慣れたゲームの音でも、今まで聞えなかったものが聞えてきてビックリすることが結構ありますよ。

話題のハイレゾ音源

音のテスト自体もハイレゾ音源を使って行ないましたが、FiiO Q1MkIIはオーディオ好きの間ではかなり普通の存在になった「ハイレゾ音源」にもしっかり対応しています。

CDなどで使われた形式の「PCM音源」のほかに、SACD(Super Audio CD)で使われた「DSD音源」のネイティブ再生も行えるようになっています。

どちらも普通のCDよりずっと情報量が多いことがウリです。キチンとしたシステムで再生すればより音楽らしい滑らかで艶のある音が聴けます。

ちなみにハイレゾ音源に関しては「耳に普通は聞えない高い音が入っているだけ」という誤解が根強く残っていますが、こちらはむしろオマケと考えてください。

普通に耳に聞える範囲の音がずっと滑らかかつ丁寧に再現出るところがこの音源達の真骨頂です。

さらにマニアックかも?な「バランス接続」

FiiO Q1NkIIは1万円ちょっとで手に入れられる、USB接続出来るヘッドフォンアンプの入門機的なポジションの製品です。ですがこのメーカーの製品はコスパがすごく高いのも特徴で、機能的にも多彩なものが多いです。

この製品もその例に漏れず、イヤフォン界隈で話題の「バランス接続」にも対応しています。

それに対応するように、今まで使われてきた3.5mmのステレオミニジャックは「アンバランス接続」と呼ばれています。

今までのイヤフォンジャックは左右の信号を完全に分離できていなくて、条件によっては左右の信号が干渉して少し混じり合ってしまいます。これを完全に分離できるのがバランス接続の仕組みです。

これを使うとほとんどのイヤフォン・ヘッドフォンで再生される音のポジションがよりビシッと決まるようになって、表現される音の空間も何割も広がります。

こちらの機能を試すため&いわゆる「中華イヤフォン」を試すためにAmazonのマーケットプレイスでちょっとギャンブル気味に、中国製の手頃な価格のイヤフォンを買ってバランスとアンバランス接続を切り替えながら音を試してみました。

正直音の違いに本当に驚きました。

カナル型のイヤフォンっぽい小さめな音の空間が一気に広がって、どこかオーバーヘッド型のヘッドフォンのような開放感もある聞え方に変わりましたから。

5千円で買ったイヤフォンですが元々音は良く、日本製なら8千円~1万円クラスに迫る音があったのですが、それがさらに3千円分~5千円分ぐらい上乗せされたような、そんな変化っぷりでした。

価格的にもQ1MkIIはイヤフォンのバランス接続への初トライにもおすすめできますね。

記事まとめ

今では非常にたくさんのことをスマートフォンだけで済ませてしまうユーザーも増えていると思います。スマホで出来ることはすごく増えていますがでも本当の意味でのオールマイティではありません。どちらかと言えば器用貧乏な側面がありますね。

音楽プレイヤーとしての機能もそんなものの一つです。そこそこの音は出ますが、本当に楽曲に込められている音楽性を楽しみ切るにはちょっと能力不足。

そんな時にもっとしっかり音楽に浸るには今回レビューしたFiiO Q1MkIIのようなヘッドフォンアンプはおすすめ機材の一つです。サイズ的に外に持ち出して使うにもあまり邪魔にならないコンパクトさですし。

オーディオ機器の紹介に対して「自分はいい音を聞きたいのじゃない、音楽を聴きたいんだ」という反論を何カ所かで見たことがあります。これ、基本的な発想としてはすごく正しいものです。

ですが、「それなり」の機材ではアーティストが音楽に込めた音楽性すべてを再現することは出来ません。それってちょっともったいないと思いませんか?

いい音「で」音楽を聴くのは本当に楽しいものですよ。